院長の小話

2011年06月20日No.58 ドライアイとソフトコンタクトレンズ

 ソフトレンズとドライアイの関係について、スマイルマークSPKという特徴的な症状と、レンズの選択の際に重要になるFDA分類について書こうと思います。

スマイルマークSPK

 ソフトレンズは一般的にハードレンズよりも乾きやすいといわれています。それは、ソフトレンズには水分が含まれているからです。レンズが柔らかいのは水分を含んでいるからで、その水分によって酸素を透過させる働きもあります。水分が含まれていると、乾きにくい感じがしますが、度々お伝えしている通り、実際は逆です。それは、レンズの水分も蒸発してしまい、その不足分を涙で補うため、涙が減ってしまうからです。レンズの水分が多ければ多いほど、蒸発した際に涙の補わなければならない量も増えるため、乾燥の症状は強くなる傾向があります。

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 スマイルマークとは、下の絵のような顔のことで、この顔を角膜(黒目)に例えると口の部分に角膜炎が出ることからそう呼ばれるようになりました。これは、ソフトレンズ特有の現象で、ハードレンズ装用者には起こりません。
 原因として、涙が局所的に少なくなり、涙液の層が破綻(ブレイクアップ)することが原因といわれています。ちょうど口にあたる瞳孔よりも下の部分の涙が最初に破綻することが観察されており、その部分が最も乾きやすい場所だから傷ができやすいことになります。

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ソフトコンタクトレンズの分類

 ソフトレンズには1日使い捨てレンズや2週間使い捨てレンズ、1ヶ月使い捨てレンズと、コンベンショナルレンズ(1年程度使うタイプのレンズ)などのような使い方による分類がありますが、別な分類方法もあります。

 ソフトレンズを含水率とイオン性の有無で4つに分類する方法があり、アメリカの米国食品医薬品局(FDA)の分類です。含水率とは、コンタクトレンズに含まれる水分の割合で50%以上を高含水、50%未満を低含水としています。高含水レンズの特徴は、レンズの水分が酸素を運ぶ担い手になることから、酸素透過性が高いことと、レンズの水分が多いため比較的柔らかく装用感が良い点があげられます。逆に、水分が多いため乾きやすい点と、汚れやすい点や耐久性が低い点が欠点になります。低含水は高含水の反対の性質をもっていると考えてよく、乾きにくく汚れにくい特徴があります。もう一つの基準であるイオン性については、イオン性の素材は非イオン性に比べて蛋白質を吸着しやすい性質があり、一般に汚れに弱いです。

 これまでは、グループI(低含水・非イオン性)のレンズがほとんどでしたが、最近ではグループIIやIVの高含水レンズの割合が増えてきました。
 ドライアイに、どのレンズが良いかというと、理論上は低含水のレンズが良いことになります。高含水のレンズは乾燥すると涙を吸い上げてしまったり、極度に乾燥すると形状が変わることもあります。私自身も最近は高含水のワンデーのレンズを装用していますが、診察中に細かな部分を観察するために目を開けっ放しにしていると、コンタクトレンズが乾いて、急に見えなくなることがあります。
 しかし、逆に低含水のレンズは、酸素透過性が低いため薄いレンズが多く、薄いと乾燥した時にレンズの保持が難しくなり、見にくくなったり、装用感が悪くなったり、外れやすくなります。では、厚いレンズが乾きにくいから良いかといえば、乾燥した時や汚れた場合の酸素透過性の低下の心配があります。一方で、低含水のレンズと高含水のレンズを比べても涙液のドライアップや蒸発に差がないとの報告もあり、完全な見解はない状態といってよいと思います。そのようなことから、色々なレンズを試してみて、乾き感の変化や目の状態を確認し、どのレンズが最もご自身の目に相性が良いかを調べ、最良のレンズを決めることが大切だと思います。

 連続装用は汚れの問題や就寝時の乾燥による酸素透過性の低下に問題があり、コンベンショナルレンズは、やはり汚れの問題があるため、ドライアイの時に避ける点に異論はないと思います。

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