院長の小話

2011年12月20日no.64 結膜炎について(その3)「細菌性結膜炎」

 今回の小話から5回にわたり、代表的な結膜炎である細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎(はやり目)、アレルギー性結膜炎を順次詳しく説明していこうと思います。

1.細菌感染症について

 細菌というのは、ブドウ球菌や連鎖球菌、緑膿菌などです。他に肺炎球菌やインフルエンザ菌(ウイルスではありません)なども有名です。結膜炎に限らず、細菌は人間の体に色々な感染症を引き起こします。例えば、大腸菌などが膀胱に感染する膀胱炎、のどの奥の扁桃に感染する扁桃炎、耳の中に感染が起こると中耳炎などがあります。また、百日ぜきは百日咳菌が原因の細菌感染です。いわゆる「おでき」(せつ)は皮膚の黄色ブドウ球菌が原因となる細菌感染症です。食中毒もサルモネラ菌などの細菌が関係する細菌性の感染症の一つです。

 感染する場所も様々なように、症状やその経過も感染した細菌の毒性の強さや体の免疫の状態により大きく変化します。細菌性の結膜炎も自然に治るものもあれば、抗生物質の点眼などで積極的に治療が必要になるものもあります。少し化膿しても自然に治る皮膚の感染症がある一方で、O111やO157で知られる病原性大腸菌で死に至る場合もあります。

2.症状

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 細菌性結膜炎の特徴的な症状は、眼脂(めやに)だと思います。一般的には膿性(のうせい)のベトベトした黄色味がかったものが出ます。「めやにで目が開かない!」という訴えをよく聞きます。他の結膜炎と同様に結膜の充血も起こります。両眼ともに感染することが多くみられます。

3.治療

 感染症の治療は、病原体が何かを明らかにして(例えば黄色ブドウ球菌感染)から、その病原体に最も効果のある薬剤を使うのが基本ですが、一般的には原因菌が明らかになるのを待って治療を開始するのでは遅い場合が多く、実際にはある程度病原菌を予想して、色々な菌に有効な薬剤を選んで投与を開始します。一般的に多く処方されるクラビット、タリビット、オフテクター、オフロキサシン、ガチフロ、ベガモックスなどの薬はニューキノロン系薬剤といわれ、幅広い適応菌種が特徴でとても有用な点眼薬です。しかしながら、レンサ球菌など一部の菌には効果が不十分なこともあり、病態によっては他の点眼薬を追加することもあります。
 また、点眼薬の他に眼軟膏や内服薬を使うこともあり、感染の原因菌や状態により判断されます。

4.特徴

 細菌性結膜炎は人にはうつりません。トラコーマといってクラミジアが原因のうつるタイプの結膜炎(厳密には細菌ではありません)もありますが、通常の細菌性の結膜炎といわれた場合は、他の人への感染は心配しなくてもよいでしょう。
 小児では、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません)や肺炎球菌などの上気道感染症(のどや鼻の感染症)の原因菌が結膜炎の原因になることが多いです。風邪のような症状と一緒に目の充血や眼脂が出た場合はこれらの菌による細菌性結膜炎がまず疑われます。

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