院長の小話

2013年12月20日no.88 近視について(その5)近視と環境因子

 前回の小話で一卵性双生児にも近視の度数の差が出ることをご紹介しましたが、このことは、近視は生まれてからの環境によって影響を受けることを示唆しております。例えば、ゲームをやりすぎると近視になりやすいとか、本をたくさん読むと近視になりやすいとか、一般的に良く耳にする内容からも、環境が原因の要素はありそうです。

(1)近視と環境因子

 現在のところわかっている、近視の環境因子を調べてみましたが、結論からいうと、あまりはっきりとはわかっていません。報告数がまだ少ないため、可能性の範囲と考えていただきたいと思います。

 まず、近業時間が長いほど近視の進行が早いとの結論でした。これは、携帯用ゲームやまんがによって近視が進みやすいと言われている内容と一致する結果だと思います。もちろん、勉強や読書も近業作業ですから、それによっても近視が進みやすくなることも否定できません。他には、都市部に住んでいる人の方が近視の進行が早く、IQや学歴が高いほど近視が進行しやすいとの結論でした。また、スポーツなどの屋外作業が多いほど近視になりにくいとの報告もあります。

 これらのことから、近くの作業を減らし屋外で体を動かすことが近視を進ませにくくするために、効果的な方法だと考えられます。では、勉強してはいけないのか、読書はやめさせたほうが良いのか、と質問を受けますが、近視を進ませないことも大切ですが、勉強や読書はそれ以上に生きていくうえで大切なことだと思います。私は、近視をすすませないために、娯楽のためのゲームやまんがを控えるのは良いことだと思いますが、勉強や読書を控えることには賛成できません。近視の進行はまだわかっていないことが多く、近業作業をしたからといって必ず近視が進むものではありません。たいへん不確定な要素です。それに対して、勉強や読書は人格形成や教養を伸ばすために、明らかな効果があるものだと考えて良いと思います。合理的な判断として「近視が進みやすくなるかもしれませんが、勉強や読書をする方が良い」ということに異論はないのではないかと思います。

(2)近業作業の時のアドバイス

 どうしても避けられない近業作業ですが、少しでも近視を進めないためにできることはないかを考えてみようと思います。近視のメカニズムがいまだに良くわかっていないため、本当の意味での有効な方法はわかりませんが、もし、近業作業が近視に影響があるとすると、おそらくより近い距離の近業作業や、連続した長い時間の近業作業が悪いことが想像されます。このことから、例えば、読書をするときは本に近づきすぎずに、一定の距離を保ち(30cm程度)、ある程度時間が経過したら休憩をしましょうというのは、理にかなっていると思います。私は、読書の時は寝ころがったりせずに椅子に正しく座り、背筋をのばしてよい姿勢で読書をしましょうとお伝えしております。姿勢が良いとおのずと本と目の距離が保たれるからです。また、30分毎に休憩を入れ、できれば窓の外の遠くの景色を眺めましょうとも言っております。さらに、暗い場所での読書だと、字が読みにくく本との距離が近くなりがちですので、適度な明るさを確保しましょうとも付け加えております。

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