院長の小話

2008年01月22日No.17 ドライアイとコンタクトレンズのお話(1)

「目が乾きます。」

暖房がついているこの時期、皆さん目が乾くようです。この訴えをたいへん多く耳にします。
ドライアイという言葉、かなり一般的になってきておりますが、定義は「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」(2006年ドライアイ研究会)となっており、

  1. 涙の量と状態:涙が少なかったり、蒸発しやすかったり。
  2. (乾きによる)角膜と結膜(黒目と白目)の障害:細かいキズです。肌荒れのようなものです。
  3. 乾きや不快感などの自覚症状:ストレートに乾くだけではなく、不快感、疲れるなどもです。
が診断の基準となっております。ちなみに「乾く」と感じるかどうか(自覚症状)は95年の診断基準では関係ないことになっておりましたので「乾く=ドライアイ」では必ずしもない状態でしたが、06年の診断基準では自覚症状も加わりました。
しかしながら、乾かなくても涙が少なかったり、角膜上皮障害が起こっている人も少なからずおり、このような場合はドライアイ疑いとなります。ドライアイ疑いの場合も点眼などの治療を行った方がよいと思います。

ドライアイ疑いも含め、程度は様々です。以前はドライアイがある場合はコンタクトレンズはできないというのが一般的でしたが、現在は重症以外は色々工夫しながら装用可能になる場合は多いです。

今回の小話は、二回にわたりドライアイとコンタクトレンズについて、最近の知見を交えながらお伝えしたいと思います。

ハードレンズとドライアイ

3-9ステイニング時の充血パターン

ハードレンズは現在ガス透過性ハードコンタクトレンズを指しますのでこちらについて説明します。以前からドライアイの場合の第一選択ですが、その理由は、涙の交換が良好なのと、レンズ自体に水分を含んでいないからです。ソフトレンズと違って、装用中にも瞬きの度にレンズが動くことにより、涙が入れ替わるため、レンズの表面が乾きにくく、汚れもつきにくいため、レンズと接する角膜表面の状態を良好に保つことができます。また、水分を含んでいないため涙の蒸発の影響を受けにくい利点もあります(レンズの水分と乾きについてはソフトレンズで説明します)。

ただし、そんなハードレンズでもレンズの動きが悪く涙の交換がうまくいかなかったり、涙の量が極端に少ない場合は、乾きによる障害(キズ)が出てしまいます。

よく、女性の方から相談を受けますが、「コンタクトをすると毎回充血する」「黒目の横の白目に充血がでる」、このような場合はドライアイを疑います。

3-9ステイニングといって、黒目を時計に例えてその3時と9時の位置に乾きによる障害をよく見かけます。その位置はハードレンズをしていると最も涙が少なくなる位置ですので、乾いて傷が出たり、炎症が起きて充血がおこったりします。

解決方法は、

  1. 点眼で涙を補う
  2. レンズの形や種類を変える
  3. ハードレンズを止めてソフトレンズにする
があります。2番の詳しい説明はとても複雑で長くなりますので触りだけ欄外に記しますが、3番も次に書きますがソフトレンズとドライアイの問題もありますし、もともと角膜乱視が強くソフトが合わない場合もありますので必ずしもうまくいくとは限りません。非常に繊細な対応が必要です。

ハードレンズの形を変える具体例

(諸説がありますのでうまくいかない場合もあります。すべて確認しながらの変更が必要です)

  1. レンズの動きをよくするためにやや大きさを大きめ、カーブをフラットにする。
  2. 涙の安定を図るためべベル(レンズの端)のエッジをやや下げ気味にする。
  3. 水濡れ性や汚れやすさを考えDk値(酸素透過係数)の低いレンズにしてみる。
などなど。いずれにしても汚れやすいので十分に洗浄することをおすすめします。

ソフトレンズとドライアイ

ソフトレンズは水分を含んでいるので放置すると水分が蒸発してしまいます。

ソフトレンズはハードレンズと異なりレンズはほとんど動きません。また、大きさもハードレンズより大きく、黒目をほぼ覆う大きさです。動かないですし覆っているのでレンズが酸素を通しにくいと目(角膜)が酸素不足になります。そこで、酸素を運ぶためのレンズの水分を増やすあるいはレンズを薄くして酸素を通すようにして目の酸素不足を防ぐ必要があります。「含水率(がんすいりつ)」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、レンズが含む水の割合で、一般にはこの値が高いほど酸素透過性が高くなります。

水分が多い方がドライアイによいのでは?と思いますが、実際は逆で、水分は常に蒸発しており、不足分は涙から補うために涙が減ってしまいドライアイを悪化させるといわれております。

原理的には含水率が低いレンズが乾きにくいことになりますが、このようなレンズは一般的には長く使うタイプのソフトレンズになります。しかし、ドライアイがあるとレンズの汚れが涙で流されないので汚れやすく、それによるアレルギーなどの問題がでます。
そこで、汚れを考えると含水率が高くても一日使い捨てレンズ+点眼が最もよいのではないかと思います。もちろん患者さんの目の状態や使用環境によりますので一概には言えません。

ソフトレンズのトラブルは「スマイルパターン」と呼ばれる、黒目(角膜)の下の方の傷がよく起こります。傷自体は点眼でよくなることが多いですが、レンズを含めた目の環境を良くしてあげないと、再発してしまいます。
次回は、ドライアイに対して強いといわれている最新のレンズについて書きたいと思います。

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