院長の小話

2010年05月22日No.45 白内障について その1 原因や症状

以前にも何度か白内障について、お伝えしてきましたが、今回は3回にわたってさらに詳しく書いていこうと思います。

白内障は視力が低下する代表的な病気です。日本においては、初期混濁も含めると50歳代で約40~50%、60歳代で約70~80%、70歳代で約85~95%、80歳以上ではほぼ100%にみられると報告されています。またアジアやアフリカの国々では、治療体制が未熟なため、現在でもなお失明原因の第一位とされております。

白内障とは…

白内障は、目の中にある「水晶体」というレンズが濁る病気です。水晶体は厚さ約4mm、直径約9mm、重さ約0.2gのきれいな透明な部分です。「種」をイメージしてもらい、皮の部分は嚢(のう)と呼ばれ、中心を核、そのまわりを皮質(ひしつ)と区別し、どの部分が濁ったかで、核白内障、皮質白内障、後嚢下白内障に分けます。水晶体の濁りは、目に入る光の量を減らし網膜には暗いぼんやりした像がうつり、かすみを感じたり、視力が低下します。また、光を散乱させてしまい、まぶしく見える場合もあります。このような状態になる病気が白内障です。


白内障の原因

最も多い原因は「加齢」です。なかなか説明が難しいですが、年とともに濁る傾向があるようです(医学的には、水晶体内の過酸化物除去酵素系の活性を低下させ、活性酸素濃度を高めて過酸化反応を促進させ、各種代謝を阻害することが原因です)。加齢のほかにも「危険因子」と呼ばれる、白内障の進行に関係している事柄がわかっています(表参照)。

他にもステロイド薬(コルチコステロイド)やある種の抗精神病薬(ペンゾジアセピン、フェノチアジン、チオキサンチンなど)、通風治療薬(アロプリロール)が白内障を発生、進行させる報告があります(もちろん、これらの薬は原疾患の治療に必要ですので、定期的な眼科受診を行いながら使用してください)。

さらに、糖尿病と白内障の関係も重要です。網膜症だけではなく、白内障の発生、進行にも注意が必要です。


白内障の症状

色々な症状が起こりますが、もっともわかりやすいのは視力低下です。眼鏡を変えても視力が出ません。今まで見えていた遠くのものが徐々に見えなくなってきた場合は視力が低下している可能性があります。

他の症状として、かすむ、にじむ、まぶしい、というような不快感を感じることもあります。


白内障に特徴的な症状として

1.グレア障害(難視)

明るい光のあるところで、物が見分けにくくなります。例えば、太陽がギラギラ照りつける日や、対向車のヘッドライトにより見にくくなります。コントラスト感度という、物を見分ける力が低下して、物が不明瞭に見えるようになることが原因です。視力が良い場合でも、コントラスト感度が低下することがあり、そのような場合は白内障手術を行った方がよい場合があります。

2.単眼複視

片目で物を見たときに複数に見える状態です。通常の複視は両目で見てだぶって見えますが、白内障の複視は、片目で見たときにだぶります。例えば、片目で月を見たときに(めがねをかけて)、いくつも見えた場合はこの状態が疑われます。

3.めがねの見え方の変化、老視の軽減

白内障のうち、核白内障では近視が進行する場合があり、めがねが合わなくなることがあります。近くの見え方がよくなり、老視(老眼)が軽くなったように感じられることもあります。

老人環:白内障ではなく、視力に影響のでない変化です

痛みや充血などの症状は起こらず、黒目が白くなるような変化もありませんので、外から見てもわからないと思います。以前の小話でも紹介しましたが、黒目の周りが白くなるのは、老人環という視力に影響がでない変化で、白内障とは違います。


次の小話では、白内障の治療について書こうと思います。

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