院長の小話

2011年01月20日No.53 ドライアイ その2 涙に関する病気

涙について前回の小話で説明しましたが、今回は、具体的な病気についてドライアイを中心にご紹介します。

1.正常な涙の一生(前回の小話のおさらい)

 前回の小話のおさらいになりますが、水道を例えとして下のイラストのように、目に水道の蛇口と排水口をつけた状態をイメージしてください。正常は、蛇口から適量の水(涙)が出て、目をうるおす働きをして、排水口から排水されます。バランスが取れていると、足りないことも、あふれることもありません。涙というと、悲しい時やうれしい時、あるいは、目に物が入った時に痛くて出てくる涙を思い出しますが、無意識のうちに涙は少しずつ出ており、目の表面を覆っています。これを基礎分泌といいます。
 そして、このような無意識の涙のバランスが崩れる状態になると病気になります。具体的には、涙の量が少なくなるドライアイ。これは、水道の蛇口から水が少ししか出てこない状態や、出てきてもすぐに蒸発してなくなってしまうイメージです。そして、もう一つは、涙があふれる流涙症(りゅうるいしょう)。排水口がつまって、あふれるイメージです。


2.ドライアイ

「目が乾きます」、この訴えをたいへん多く耳にします。
 ドライアイという言葉は、かなり一般的になってきておりますが、定義は「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」(2006年ドライアイ研究会)となっており、 以前の小話でもご紹介しました。

 簡単に説明すると、涙が少ないことや、蒸発しやすいことが原因で、角膜と結膜(黒目と白目)に細かいキズなどができる場合をドライアイと呼びます。ちなみに「乾く」と感じるかどうか(自覚症状)は95年の診断基準では関係ないことになっておりましたので「乾く=ドライアイ」では必ずしもない状態でしたが、06年の診断基準では自覚症状も加わりました。

乾き以外の症状として
眼が充血する
眼が疲れやすい
眼が重い
眼がゴロゴロする
などもドライアイを疑う症状になります。

ドライアイは大きく二つのパターンがあることがわかっています。

(1)涙の量の問題

 涙の量が少ない場合です。では、なぜ涙の量が少なくなるのでしょう。その原因はいくつかあり、例えば、病気が原因で涙の量が減ることがあります。代表的な病気にシェーグレン症候群があります。唾液や他の分泌液も少なくなり、涙の量が減ります。また、他の原因としてある種の降圧薬や精神安定剤が関係しているものもあります。さらに、そのような明らかな異常がなくても、夜遅くまで起きていたり、ストレスが強い場合、単に高齢であることも涙を少なくする原因になることもあります。

(2)涙の質の問題

 涙の性質やまばたきの回数、目の構造によって、涙の蒸発が早くなり、目が乾くこともあります。前回の小話で説明したように、涙の表面は油層で覆われています。この油が少ない場合は、蒸発が早くなり、涙が覆いきれない部分がでてきます(ドライスポット)。また、単に眼が大きい場合や乾燥した部屋なども涙の蒸発を早めます。また、よくパソコンの作業(VDT作業)をしている時に眼が乾くと訴える方がいますが、これは、画面を集中して見ることにより、まばたきの回数が減ることによるものです。まばたきの回数が減るということは、眼が開いている時間が長くなり、涙がどんどん蒸発してしまいます。一説によると、パソコンの作業中はまばたきの回数が1/4になるといわれており、通常の4倍もの長い時間、眼が開いていることになります。

ヒアロンサン点眼液

ヒアレイン点眼液

<治療と気をつけること>

 ドライアイの治療は、点眼により涙を補ってあげるのが簡便かつ効果的です。ヒアルロン酸が配合されている治療薬が一般的で、当院でも処方することが多いです。さらに重症なドライアイの場合は、涙の排水口にあたる涙点を閉鎖してしまう処置(手術)があります(当院では行っておりません)。代表的なものに涙点プラグと呼ばれるものがあります。

 このような治療以外にも、日常生活での対策も重要です。例えば、エアコンを直接受けないようにする、パソコンの作業時は意識的にまばたきを行う、部屋の加湿を行う、などです。車の中では、エアコンによる乾燥と、集中によるまばたき回数の低下の両方の影響を受けますので、特に注意が必要です。また、飛行機の中も乾燥していますので、コンタクトレンズの方は、めがね装用に切り替える(または、めがねを持参して乗り込む)ことも大切です。たばこの煙も乾きの原因になりますので、他の人の煙が自分の眼に当たらないようにすると良いと思います。


3.流涙症

 涙があふれる病気を流涙症といいます。多くの場合、本来なら鼻に抜けていく涙の排出がうまくいかずにあふれるため、鼻へ抜ける通り道を調べると原因が見つかることが多いです。涙点というまぶたの目頭側にある穴がつまっている場合や、その穴に弛緩した結膜(たるんだ白目の膜)が覆いかぶさっている場合、涙嚢というとちゅうにある袋で感染などが起きている場合(涙嚢炎)、また、鼻の病気が原因の場合もあります。
涙の排出に問題がない場合は、何らかの原因で涙がたくさん出ていることを考えます。例えば、眼に何か異物が入っていて常に刺激している場合や、角膜(黒目)の傷によって涙が異常に多く出ていることもあります。

 逆に、涙が少ないため(ドライアイ)に、涙の排水がうまくいかなかったり、角結膜(黒目と白目)に傷がつき、涙を出す刺激を生む痛みが起こり、涙があふれる場合もあります。この場合は、点眼などで涙を補ってあげると症状がよくなることもあります。

 次回の小話ではコンタクトレンズとドライアイの関係について書く予定です。

Category :
院長の小話