院長の小話

2011年07月20日No.59 コンタクトレンズによる角膜感染症について(その1)

 今月から3回にわたって、コンタクトレンズに関係する角膜(黒目)の感染症についてお伝えしようと思います。今回は、感染症について一般的なお話と目の感染症について、おおまかに説明しようと思います。

感染症とは・・・

 感染症とは、病原微生物(病原体)が色々な経路を通り生体に侵入して増殖し、また毒素を出して起こす病気です。生物がいれば感染が起こると言っても良いほど、生き物にとって最も重要な病気だと思います。ヒトにとっても、近代までは、病気の大部分は感染症が占めていましたし、今現在も発展途上国などでは死の病として恐れられています。全世界では死因の約1/4が感染症といわれており、医学が発展した現在でも、その治療や予防は大きな関心事の一つです。

目の感染症

 目の感染症は病原体が目のどの部位に感染するかで、数種類あります。
 まず、感染性の結膜炎などは白目(結膜)やまぶたの裏側(眼瞼結膜)に病原体が感染して起こります。

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 また、痛みを伴ってまぶたが腫れた場合は、マイボーム腺という涙の脂分を作る部分に細菌が感染して起こる麦粒腫(通称・ものもらい)です。その他、黒目(角膜)に感染する角膜感染症や、眼球内に病原体が入って感染する眼内炎なども頻度はとても少ないですが、目の感染症の一つです。


診断

 感染症の診断方法はいくつかあります。最も基本的なものは身体診察(検査)です。発熱や皮膚の発赤、呼吸の雑音や、腹部の痛みは代表的なものです。もちろん、痛みや下痢、嘔吐などの症状を聴き取ることは診断にはとても重要です。
 目の感染症の場合も、同様に目の痛みやまぶたの発赤が起こりますが、目の特徴として、見にくくなる視力低下や、結膜(白目)の充血、まぶしさ、かすみ、多量の眼脂(めやに)の出現があります。検査としては、細菌などのある程度大きいものは、顕微鏡で直接観察したり、培養といって増殖しやすい環境を作り、増やして確認することもあります。ウイルスなどの顕微鏡では見えない小さなものは、抗体や抗原といった血液中の物質を測定することもあります。
 その他、エコーやレントゲン、CTやMRI、また内視鏡などの画像診断で病巣の様子から診断することもあります。

治療

 感染症の多くは栄養補給と安静による免疫力の回復が治療の基本です。また、日本を含めた先進国では、治癒を早めたり、後遺症を予防したりする目的で細菌に対しては抗生物質、ウイルスに対しては抗ウイルス治療が併用されます。また、部分的な感染においてはその部分を切って溜まった膿(うみ)を出す「切開排膿」や、膿を外へ出す通り道を作ってあげる「ドレナージ」といった外科的治療も行われます。

 目の感染症でも同様で、抗生物質の点眼や軟膏を中心に、重症の場合は内服や点滴も行います。ヘルペスなどのウイルス感染には、抗ウイルス薬の眼軟膏や内服を行います。また、麦粒腫は多量に膿が溜まり表面に近い部分にある場合には、外科的に切開排膿を行うこともあります。

予防

 病原体に負けない免疫力を保つことが重要です。一般的には普段から適切な栄養と休養をとることを怠らないことが大切です。また、病原体になるべく接しないことも予防には必要で、適度に消毒や滅菌により病原体からの感染を防ぐことも重要です。ちなみに消毒とは、病原体を殺したり能力を減退させ病原性を取り除くことです。また、滅菌とは、病原性の有無にかかわらず微生物を死滅させたり除去することです。
 さらに、インフルエンザなどの特定の病原体には、免疫力を強化して感染を防いだり、感染しても重症化を防ぐことがワクチンにより可能です。
 目の感染症の予防については、もちろん不衛生にしないことは大切です。私事ですが、大学生の時の学校祭で、悪ふざけでドブ池(通称・ひょうたん池)に飛び込んだところ、池の細菌が原因で急性結膜炎になり、めやにが大量に出ました。そのような、病原体を目に入れないことが大切なのは言うまでもありません。
 また、感染源としてコンタクトレンズはとても重要です。洗浄を怠ったり、汚れた指でレンズを扱うことは避けるべきですし、もちろん汚れたレンズは使用せずに交換することが大切です。

 来月の小話では、コンタクトレンズによって角膜(黒目)に感染症が起こる角膜感染症について説明しようと思います。


昨年の秋に撮影した北海道大学のメインストリートです。ここから少し行くと工学部の横にひょうたん池があります。

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