院長の小話

2011年09月20日no.61 コンタクトレンズによる角膜感染症について(その3)

 3回にわたり、感染症からコンタクトレンズによる角膜感染症について説明してきました。今回は、どのようにすれば、コンタクトレンズの感染症にかかる危険性を減らせるか、という最も大切な予防についてと、最近時々耳にするアカントアメーバー感染症についてお伝えしようと思います。

予防

 繰り返しますが、最も大切なのは感染症にかからないための予防です。実際に角膜感染症はそれほど多い疾患ではありません。しかしながら、コンタクトレンズをしている以上、感染するリスクは常にあり、感染した場合でさらに重症化すると、後遺症が残るような危険性もあります。そこで、普段からの予防が大切です。

*使用日数を守る

 コンタクトレンズの決められた使い方を守ることが感染予防の第一歩です。コンタクトレンズは十分な安全性を考えられて作られていますが、当然決められた使い方をする上での話です。1日使い捨てレンズは最長で1日しか使えません。どんなにきれいに見えても二日目は使えません。前回の小話で書いたように、洗浄液で洗っても汚れは除去できません。また、再装用が禁止されていることも重要です。つまり、一度はずしたら(仮に半日しか使っていなくても)二度と使うことができないということです。また、意外とよく質問を受けますが、2週間使い捨てレンズは、仮に1日しか使用していなくても開封から2週間が過ぎたら捨てなければなりません。

*きちんと洗浄する(1日使い捨てレンズ以外)

 レンズの汚れは、蛋白質や脂分ですが、洗浄せずに放置したり、蛋白除去が必要なレンズにもかかわらず蛋白除去を行わないと、汚れが蓄積していき、細菌が繁殖しやすい状態になります。もちろん、消毒を行うことでこのような病原菌を無毒化することも重要です。洗浄するレンズは、決められた洗浄方法に従って、面倒がらずに行うことです。また、汚れが残る場合は洗浄液を変えることにより改善することもありますので、洗浄力の強い別の洗浄液を試してみるのも重要です。

*レンズケースを清潔に保つ(1日使い捨てレンズ以外)

 コンタクトレンズのケースの洗浄と交換も定期的に行い、ケースを清潔に保つことも重要です。また、保存する液も毎回変えなければ、細菌が繁殖する危険があります。旅行の時や、緊急時にも洗浄液とケースを持ち歩き、いつでもレンズのケアができるようにすることも大切です。

*レンズに扱うときは必ず手を洗う

 いくらレンズを清潔に保っても、装用時に汚い指で触ってしまっては、指についている細菌でレンズが汚染してしまいます。必ず手を石鹸で洗ってから、レンズを扱うのが大切です。

*レンズの異常を放置しない

 レンズは時に欠けたり、変形したり、破れたりします。そのような破損した状態でレンズを装用することはたいへん危険です。角膜に傷をつけてしまい、本来の感染防御の能力が低下し、感染しやすい状態になる可能性があります。汚れも同様で、汚れが付着しているレンズや、変色や濁りがあるレンズの装用も同様の理由で中止すべきです。

*異常を感じたらレンズを装用しない

 角膜に異常がある状態でのコンタクトレンズ装用は医師の指示がある特殊な場合以外は、逆に病気を悪化させますので、必ず装用を中止すべきです。軽度な角膜炎(角膜の傷)などは、ソフトのコンタクトレンズを装用すると、逆に痛みがやわらぐことがありますが、それによって治るわけではないので注意が必要です。そのような装用も、同様に感染や状態を悪化させる原因になりますので、必ずレンズの装用を中止しましょう。

*異常を感じたら眼科を受診する

 さらに、少しでも異常を感じたら、コンタクトレンズの使用を中止して眼科を受診することが大切です。すべての病気において早期発見、早期治療は大切で、特に感染症はこれらのことがもっとも当てはまる病気の一つです。

*定期的に眼科を受診する

 感染の原因となる角膜の傷(角膜炎)が長期間にわたり続いている方を時々見かけます。痛みやしみる感じなどの症状がある方もいれば、まったく無症状の方もいて、診察で見つかる場合も少なくありません。自分では気がつかない病気の発見に診察は重要です。また、検査の間にレンズの状態を確認しますで、レンズの問題にも気づくことができます。また眼科の医師やスタッフに対して、日々のコンタクトレンズ装用に関する質問ができることや、気がつきにくいアドバイスを聞くなども感染予防には大切だと思います。

アカントアメーバー感染症について

 池や沼にすむ原虫(アカントアメーバー)により起こる角膜感染症です。1980年代にアメリカで感染者が多数報告され、ほとんどの人がコンタクトレンズ装用者という特徴がありました。原因を調べていくと、当時は水道水に粉状の薬品を混ぜて生理食塩水を作っており、使用した水道水の中にいるアメーバーが原因だとわかりました。日本では熱消毒が普及しておりましたので、当時もほとんど感染者はいませんでした。現在もかなりまれな病気ですが、常に注意はすべきだと思います。ソフトのレンズを水道水で洗浄したり、洗浄液や保存液がないからといって水道水で保存するのは危険ですので絶対に行ってはいけません。
 症状は充血や、痛み、涙が出る流涙、見にくくなる視力低下です。治療は、特効薬がなく、とても治りにくく治療の難しい感染症です。角膜への影響も重大で、永続的な混濁が残ることも少なくなく、最終的に角膜移植が必要になる場合もあります。

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