院長の小話

2013年08月20日no.84 近視について(その1)

「携帯用ゲームをすると近視が進むのですか?」「遠くをよく見ると近視になりにくいのですか?」「日本人は近視になりやすいですか?」「近視は遺伝するのでしょうか?」「めがねをかけると近視はすすむのでしょうか・・・」

 日々の診療の中で、色々な質問を受け、色々なお話を耳にします。裸眼視力低下の一番の原因で、一説には日本人の半分はなると言われている「近視」。その本質はわかっているようで、わかっていないことが多いと思います。今回から数回にわたって、近視について最近の知見を交えながら、私の知っている範囲で説明したいと思います。

(1)近視とは
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 近視は屈折異常の一つです。屈折異常とは簡単にいうと、目に入った光が網膜上で焦点を結ばないため物がボケて見える状態です。近視のほかに、遠視や乱視という言葉を聞いたことがあると思います。
 近視の定義は、調節力を働かせていない状態で、網膜よりも手前で焦点を結ぶため、遠くが見えない状態です。近視が軽いと近くは良く見えますが、近視が強度だと、近くも目のそばまで寄せないと見えません。

(2)近視の原因

 網膜の手前で焦点を結ぶのが近視ですが、その原因によりいくつか分類できます。もっとも多いのが軸性近視と呼ばれるもので、目の前後の長さである奥行きが長くなり、網膜が後ろへ移動することで、焦点を結ぶ位置が網膜よりも前に移動することが原因です。目が前後にのびるイメージでしょうか。人間の体は、20歳前後までは、体の大きさが大きくなって成長します。もちろん目も一緒に大きくなり、その影響により近視が進行します。ただしすべての人が近視にならないのは、生まれた当初は遠視といって、網膜の後方で焦点を結ぶ状態が一般的で、成長による近視化を打ち消すようにできています。成長による近視と、生まれ持った遠視がちょうどつり合えば正視といって、屈折異常がない状態になります。ただし、多くの人が近視化の影響のほうが強く、近視になるのです。

 他の原因として、角膜や水晶体という目の前の方にあるレンズのような役目をする部分の異常で、網膜の上でうまく像が結ばれずに近視になることもあります。これを屈折性の近視と呼ぶこともあります。また、似て非なるもので偽近視(仮性近視)と呼ばれる、調節という近くを見るときにピントを合わせる力が働きすぎて、網膜の前に像を結んでしまう状態があります。特徴として、見え方が一定ではなく、調子よく見える時もあったり、休息や点眼治療で改善します。軸性近視との違いです。

(3)近視とめがね

 近視によって、裸眼視力は低下します。しかし、医学的に厳密に病気とは言いません。それは、めがねやコンタクトレンズで、目に入った光をきちんと網膜の上で焦点を結ぶように矯正してあげることで、遠くが見えるようになるからです。例えて言うなら、目のものを見る力は十分にあるのに、きちんと発揮できていない状態です。対して、視力が低下する病気の場合は、めがねをかけてもコンタクトレンズをしても(どのようなことをしても)視力が出ません、つまり、遠くのこまかなものを見る事ができません。具体的に眼科での検査では、めがねをかけてする矯正視力の検査の結果が1.0未満になります。
 近視に対しては、まずはめがねによる矯正を試みます。めがねによりほとんどの場合、遠くが見えるようになり、日常生活の不便から開放されます。次回の小話では、めがねにまつわる2つの質問を紹介しようと思います。

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