院長の小話

2007年11月25日No.15 ネコ・ヒト・ウマの瞳孔の話(その3)

ネコ、ヒトに続き、最後はウマです。まずはウマの目のお話から…。

ヒトも含めた動物というのは、生活や行動に合わせて体の各部分を進化させますが、ウマの目はヒトと大まかな構造は似ておりますが、色々特有の違いがあります。

まず、ネコもヒトも目は正面についておりますが、ウマはほぼ真横にあります。人間の視野は両目で約200°と言われておりますが、ウマはなんと350°。残り10°は真正面と真後ろですが、少し片目をずらすと当然見えます。ヒトもネコも前についている目で獲物の動きや距離を捉えることができます。それは、獲物をつかまえるために有利だからです。しかし、ウマは草食動物ですので、大切なのは肉食動物を早めに見つけ逃げることです。視野が広いときょろきょろしなくても敵を見つけることができ、たいへん有利です。

そんな視野がとても広いウマですが、実はまったく見えない部分があります。それは真上です。ベランダのある厩舎で真上からウマを呼ぶときょろきょろ首を動かし声の主を探すそうですが、首の動きの限界もあり見つけられないそうです。

物を見る角度で、眼の中で像を結ぶ位置がちがうので、遠くと近くを楽に見ることができます。

ウマは、四六時中、食料の草を食べるために地面に頭を付けて、とても近くを見なければいけません。しかしその間もライオンなどの肉食動物に食べられないように常に遠くを気にしております。ヒトだと、ピントを合わせるために筋肉を使い調節を行う必要がありますが、ウマの目は楕円形にできていて、遠くの景色は遠視に、近くの景色は近視に像を結ぶようにできています(下図)。つまり遠くを見る時にはあごを引き上目使いに、近くを見る時には逆にあごをあげて物を見ます。この感じは、ちょうど遠近両用のめがねを使っている状態に近いですね。

横長のウマの瞳孔

さて、瞳孔のお話ですが、ネコの瞳孔は縦長、ヒトの瞳孔は丸、ウマの瞳孔は横長で、周りをよく見渡せるようになっています。

他にちがう点として瞳孔の上方に「虹彩顆粒」なる黒い塊があります。これは、遮光のためにあるもので太陽光が強く反射してもまぶしくないようにあるそうです。


虹彩認証の機械

瞳孔について最新の話として、虹彩の模様はたいへん複雑で個人個人で異なっております。最近、指紋を認識して開く鍵などがありますが、肌荒れで読み取りができなかったり、ゼラチンで作った人工指で解除できてしまう可能性があるそうです。当院の金庫も指紋を認識して開錠しますが、安物だからか指が乾いていると受付けてくれません。

その点、虹彩はみつめることによって読み取りますので確実ですし、触れなくてもよく衛生的です。

「まわりの明るさで瞳孔の大きさが変化するので、虹彩の模様も変化するのではないですか?」

実は、虹彩の模様は瞳孔の大きさを変える筋肉の模様ですので、大きさが変わっても相似的に変化するので大丈夫だそうです。

もしかすると、みつめるだけで鍵が開いたり、暗証番号を押すかわりにみつめるだけでお金がおろせる、そんな便利な世の中になるかもしれませんね。

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