院長の小話

2009年02月21日No.30 キャリアグラス(遠近両用めがね)について

遠近両用めがねというと、レンズの一部に近く用のレンズが目立つめがね(図のような)を想像される方が多いと思いますが、今の遠近両用めがねはレンズに境目がないものも多いです。一見すると普通のめがねと区別がつきません。


レンズのしくみ

レンズの一部(半分)に近く用のレンズがあるレンズを二重焦点レンズといって、近く用に合わせた度数のレンズが下の方にあります。手元や近くを見るときは視線を下げると、このレンズの部分を通して見ることになり、近くが見やすくなります。レンズに境目がありますので、視線が境目を越えるとき、見え方が急激に変化します。


それに対して、レンズに境目がないレンズは、累進屈折レンズといって、少し複雑にレンズの度数が設定されております。 最もポピュラーな遠近両用レンズで説明しますと、図のようにきのこをイメージしていただくとわかりやすいと思います。

このきのこの部分が実際に見る時に使える範囲です。きのこ以外の部分は、ゆがんで見づらい部分になっており、残念ながら設計上この部分をなくすことはできません。きのこの「かさ」の部分が遠くを見るときに使うレンズです。イメージとしては上の絵のような見え方になります。

一般的な累進屈折レンズを中心に説明していきます。

利点と欠点

遠近両用めがねの利点は、めがねのかけはずしなしで見たい場所を見ることができる点です。しかしながら、万能ではなく、欠点もあります。

通常のめがねとの違いとして、累進帯といって遠用の度数から近用の度数へ段階的に変わる部分があります。きのこの「柄」のかさ寄りの部分です(きのこの絵の中の部分です)。この部分は遠くと近くの間の中間を見るときに適しておりますが、段階的に度数が変わっておりますので、視線や体の動きに対して見え方が変化します。ゆれるような気持ちの悪さを感じることがあります。

また、近用部分(きのこの「柄」の部分の下の方)が遠用部分よりも狭く、先ほども説明しましたが、この部分以外で見ようとしてもボケてほぼ見えません。ですので、近くのさらに横を見るときは目だけではなく顔ごと動かす必要があります。二重焦点レンズと同様に、近くを見る場合は、視線を下に向ける必要があります。一般的に、近くの見える範囲は手のひら位の大きさしかありません。

欠点が多いように感じますが、これらの欠点を上回る十分な利点がありますので、大切なのはこれらの欠点に慣れることだと思います。

慣れ方

慣れ方として、まずは座るなど止まった状態で使用します。テレビなどを見たり、視線を落として新聞などを見るとよいでしょう。

次は部屋の中で使ってみます。ゆっくり歩いてみたり、家の中での普通の動作をしてみます。ある程度慣れてきたら、階段に挑戦します。足元の段差を見る場合、普通は下目目線になりますが、そうすると近用部分でみることになり盛り上がって見えて、踏み外す危険があります。ですので、遠用の上の部分を使って足元を確認することが大切です。あごを引きめにして上目使いにするとよいと思います。

その後、外での使用を試してみます。車の運転はかなり慣れてからが良いですが、バックする時やミラーを見る時は、目線だけの移動だと見えませんので、顔ごと動かすとよいでしょう。

遠近両用めがねと職業

現在、遠近両用めがねは色々な種類があります。次回の小話で詳しく説明しますが、遠近以外に、中距離と近距離が見やすい中近、近くのみを重視した近近などがあります。また、レンズによっては近用部分が広いものなどもあります。どの距離をどれだけ見るかは職業や生活環境で変わってきます。それに合わせためがねを作るとよいでしょう。

例えば、美容師の方は、髪を切る時は手元の近くの距離を、鏡越しにお客さんの様子を見るときは遠くの距離を見る必要があります。遠近両用めがねがおすすめですが、できれば髪の毛がよく見えるように、近用の範囲が広いなどの近用重視タイプの遠近が良いと思います。

学校の先生は、一番後ろの生徒、黒板、手元の教科書と、とても見る範囲が広いです。遠中近のバランスがとれためがねがおすすめです。

会社員の方は、仕事の内容によります。パソコンなどの事務仕事がメインの方は近くや中間がメインになりますが、営業などの外回りやお客様と接する機会が多い方は遠方の見え方も重要になります。

次回の小話は、中近や近近、パソコン用のめがね、さらに遠近両用コンタクトレンズについてご紹介しようと思います。

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