院長の小話

2009年06月21日No.34 黒目の傷について その1

黒目の傷は色々な理由でつきます。眼科では角膜炎(かくまくえん)と呼ばれることもあります。正式には「びまん性(点状)表層角膜炎(症)」「角膜びらん」「角膜上皮欠損」「角膜潰瘍」という病名になり、簡単にいうと傷の深さで分類します。

3回にわたって、黒目の傷について、写真を交えて紹介していこうと思います。

原因とパターン

正常角膜:傷を確認する時に涙を色素で染めて青い光を当てます。傷がある場所が黄色くなります。傷がない場合はすべて弾くので色はつきません。


線状の傷:紙が目に当たって傷ができました。


薬剤性の傷:目薬のアレルギーです。わかりにくいですが無数の傷がでてザラザラな状態です。薬をやめると傷がなくなります。


ゴミによる傷:まぶたの裏のゴミが原因で大量の傷がついています。痛みがかなり強く出ていました。


枝が刺さってできた傷:黒目の表面がむけた傷(角膜びらん)があります。痛みと涙が出ていました。

黒目の傷は、傷の場所と傷のパターンが大切です。それは、原因を考えるための多くの情報を与えてくれるからです。

全体なのか、一部分なのか

黒目の一部に傷がある場合、黒目に何か当たった場合や、まぶたの内側にゴミが入って傷がついた場合や、コンタクトレンズの傷や汚れを考えます。それに対して、黒目の全体に傷が広がっている場合は、一般的には薬などの薬剤性を疑います。例えば、目薬といっても薬ですので、相性が合わなかった場合、目がただれてしまうイメージです。それが傷となります。

繰り返しているのか、今回だけなのか

また、今回はじめての傷なのか、今までも繰り返しているかは、傷の周りに濁り(角膜混濁)や異常な血管があるかで、ある程度予想できます。今回だけのものであれば、今回の治療をきちんと行えばよいですが、繰り返している場合は、根本的な原因を取ってあげないと再発してしまいますので、原因を見つけ再発を予防することと傷が治った後も経過観察が必要です。

特有のパターンに当てはまるか

まぶたの裏側のゴミによる傷は、当然ですがそのゴミがあたる場所に傷が密集しております。ドライアイで目が乾いてつく傷やコンタクトレンズによる傷は、ある程度パターンがあります。例えば、ハードコンタクトレンズ+ドライアイの場合は3-9パターン(黒目を時計にたとえると、3時と9時の場所に傷がつく)、ソフトレンズ+ドライアイの場合はスマイルパターン(黒目をスマイルマークにたとえると口の場所に傷がつく)などが有名です。次の小話で詳しく説明します。

症状

症状は、痛みやしみる感じが一般的です。皮膚の傷と同じで、黒目(角膜)には痛みを感じる神経がありますので、傷ができると痛みを感じます。皮膚の傷だと炎症で傷のまわりが赤くなりますが、黒目自体は血管がないので傷のまわりは赤くなりませんが、その代わりに血管が豊富な白目(結膜)が充血して赤くなります。また、涙が出る、光がまぶしいなども傷を疑わせる症状です。
しかし、まったく痛みなどの症状がない場合もありますので、注意が必要ですし、ソフトコンタクトレンズは、場合によっては絆創膏のような働きをして痛みが和らぐ場合もあります。しかし、それは良いことではなく、レンズの汚れが傷につくとたいへん危険ですので、傷の時はコンタクトレンズを中止しましょう(治療目的で医師の指示がある場合は除きます)。
また、傷の場所によっては、視力が下がって見にくくなります。めがねのレンズを黒目にたとえて、そのレンズが傷だらけだったり、レンズの真ん中の重要な場所に傷やにごりがあれば、見にくくなるのが想像しやすいと思います。黒目のまわりの傷だと、ものを見るのにあまり影響が出ないので、見にくさを感じないこともあります。

このように、症状は様々ですが、大切なことは、まったく症状がなくても傷がついていることがあることと、症状がある場合は、傷以外でも何らかの病気が起きていますので、放置しないことが重要です。さらに、早期発見早期治療が大切なのはいうまでもありません。それは、黒目というのは、表面は再生しますが、中間や内側は再生しませんので、傷が深かったり経過が長いと濁りとして残る可能性があります。皮膚の傷でも、重症だと傷跡が残るのと同じです。皮膚の傷は見た目の問題(整容上の問題)ですが、黒目の傷は濁りとして跡が残ると「見にくさ・視力低下」としての問題(機能上の問題)が残る可能性があります。これは、めがねをかけても見えるようにはなりません。場合によっては一生回復しない可能性もありますので注意が必要です。

治療

治療は、基本的には体に備わった治癒力で治りますが、それを助けてあげるためにヒアルロン酸などの乾きを取る目薬を使うのが一般的です。傷は、細菌に弱いので、感染予防の目的で抗生物質の点眼をすることもあります。眼軟膏などが処方されることもあります。傷を治す時に大切なことは、感染を防ぐことですので、こすったり、目にホコリやチリが入る場所へは行かないようにするのと、コンタクトレンズをしている方は中止してめがねで生活してもらいます。治る期間は傷の程度によって違いますが、早いものだと数日で跡かたなく消えますが、重症の場合は数週間と時間がかかります。

次の小話で、一般的な傷のパターンとその原因と予防方法を書こうと思います。


コンクリートの破片が目に入ってできた傷:十分洗眼して、点眼治療をはじめました。

左の写真の一週間後:跡形なくきれいに治癒しました。

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