院長の小話

2007年12月21日No.16 七転び八起き、だるまのお話

今年最後の院長の小話は「だるま」についてです。

だるまというと、七転び八起き、不屈の根性をあらわす縁起物でおなじみですが、選挙で当選した方が目を入れるのを私は思い出します。あれはいったいなんの儀式なのでしょう? ・・・色々文献を紐解いてみました。

だるま(達磨)は、江戸時代に中国から長崎の寺院に伝来したのが起源と言われています。その時は黄色だったそうです。禅宗の開祖とされる菩提達磨(ぼだいだるま、インド人です)の坐禅姿の置物です。

天然痘の予防法(種痘)を発見したエドワード・ジェンナー

さて、病気の話を少し。天然痘という病気をご存知でしょうか?別名「疱瘡(ほうそう)」とも呼ばれるこの病気、昔は突然発病し死亡率の高い伝染病として世界中で流行していました。死に至らなくても顔や体にひどい痘跡(あばた)を残すためとても恐れられていた伝染病です。エジプトのミイラにも感染した跡があり、たいへん古い時代からあった病気でした。

1977年にソマリアの患者さんを最後に天然痘の感染者は報告されておらず、その3年後にWHOは根絶宣言を行いました。

さて、だるまの赤い衣は疱瘡(天然痘)を引き起こすと信じられていた「疱瘡神」が赤色を嫌い、赤には魔除の効果があるからだとされています。子供に玩具として与えたのは、何とかして恐ろしい疱瘡から我が子を守りたい親の気持ちがこめられていたのだと思います。

だるまの目入れには諸説がありますが、その一つはこの疱瘡とかかわりがあります。疱瘡が流行していた当時、子供の目が疱瘡で失明しないように少しでもよい目が入っているだるまが人気でした。だるま商は、だったら売るときにお客さんの前で少しでもよい目玉を入れてあげようと工夫し、目無しだるまばかりになってしまったそうです。

明治初期になると疱瘡も影をひそめるようになり、その後は様々な願いをかなえるだるまとして現在に至っています。目を入れるということは、目が出た、お目でたいということで願いがかなったという意味があります。まず、買った人が片目を入れてまつり、願いがかなえばもう片方を入れるのが一般的です。お蚕さんの養蚕業者の間で流行した願掛けがルーツだそうです。

選挙での目入れは昭和5年からはじまりました。しかし、現在は視覚障害者への配慮で公の場では行わなくなってきています。だるまに目を入れて選挙の勝利を祝う風習は、両目があって完全という偏見意識を育てる恐れがあるとされています。

つまらない小話に付き合っていただきありがとうございました。来年もまたよろしくお願いいたします。良いお年を。

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