院長の小話

2009年11月24日No.39 乱視用コンタクトレンズ(ソフト)の特徴

前回の小話で、乱視についてと、乱視用のコンタクトレンズについてご紹介しました。
今回はソフトレンズの乱視矯正コンタクトレンズの特徴について書こう思います。

乱視用コンタクトレンズ(ソフト)の特徴1

乱視を矯正するためには、乱視の度数だけではなく、向きも合わせる必要があります。さらに、乱視だけがある場合は少なく、ほとんどの場合は遠視や近視も一緒にありますので、レンズには近視または遠視の矯正と乱視の矯正を同時に行わなければいけません。そのことにより、乱視用のレンズはとても種類が多くなり、合わせるのに精度が必要になりますし、製作するコストもかかるため、価格も高めです。近視用のレンズと乱視用のレンズを比較してみました。

乱視用→1160種類!(66トーリック)

近視用→31種類(メダリストII)

例えば右の表示は近視用のレンズ(右上)のものですが、度数を表す数字は-3.25です。これは球面度数で近視ならマイナス、遠視ならプラスの値です。度数に関する数字はこれのみです。

しかし乱視用のレンズ(右下)は-3.25と-0.75と180の3つの数字でレンズが決まります。最初の数字は近視用のレンズと同じ球面度数です。純粋な乱視の方は少ないため、ほとんどの方は近視や遠視の矯正も必要です。球面度数は「S」や「SPH」で表されますが、これはsphericalの略です。さらに乱視用レンズで特有なものとして、-0.75は円柱度数です。「C」や「CYL」で表されるのは、cylindericalの略です。これだけではなく先ほどの乱視の向きにあたるのは180で、これは180°の乱視軸を表しております。「AX」はAxisで、軸を表しております。

このように乱視用のレンズは3つの数字の組み合わせがありますので、種類が膨大になります。

例えば、メダリストⅡという近視用のレンズは度数が-0.25Dから-9.00Dまで31種類(-0.25ステップ、-6.5から-0.5ステップ)ですが、メダリスト66トーリックという乱視用のレンズの場合、近視度数が0.00Dから-9.00Dの29種類、乱視度数が-0.75Dから-2.75Dまでの5種類、乱視の軸は10°から180°までの8種類あります。これらの組み合わせですので、29×5×8=1160種になります。驚くほど種類が多いです。ちなみに「D」はdiopter(ディオプター、ディオプトリ)で屈折度の単位です。


乱視用コンタクトレンズ(ソフト)の特徴2

乱視用レンズの特徴として、近視(遠視)用レンズと違い、レンズに向きがあるために、レンズの回転が問題になります。近視(遠視)用のレンズはレンズが目の上で回転しても視力に影響はでません。しかし、乱視用のレンズは、5°でも回転すると、見にくさを感じるといわれております。レンズには自分で正しい向きになるような工夫がされておりますが、まぶたの力や形、角膜(黒目)の形によっては安定しないこともあります。

「まばたきの度にぼやける」「見えるときと見えないときがある」場合はレンズの安定性の問題が疑われます。このような場合は、軸の調整でうまくいくこともありますが、レンズとの相性が問題の場合はレンズを別な種類に変更します。

近視・遠視用:回転しても見え方に影響なし

乱視用:回転するとかなり見にくくなる


以上のように、乱視用のレンズは値段も高く、レンズの安定性の問題もあるため、近視用で十分あるいは問題のない視力が得られる場合は、乱視があっても近視用をすすめることも多いです。乱視があるからといって乱視用にしなければ視力が下がるようなこともなく、見え方に違和感がなければ疲れの原因にもなりにくいと思います。しかし、夜の運転時に見にくくなったりすることもありますので、そのような場合は、乱視用のレンズにするか、コンタクトレンズを外して、乱視の入っためがねをかけると良いと思います。

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